メンタルモデル
メンタルモデルとは
メンタルモデルは元々認知心理学の用語で、「個人が現実世界をどのように認識し解釈しているか」を指す。 デジタルプロダクトデザインにおいては、「ユーザーがシステムをどのように動作するとイメージしているか」や「ユーザーがタスクをどのように認識しているか」など、ユーザーを主語にした認識を示すことが多い。
メンタルモデルは、認識する対象ごとに一意に定まるわけではなく、個々人のおかれている環境、文化、習慣や経験をもとに形成されていくものである。 そして、形成されたメンタルモデルは、ユーザーの意思決定の判断材料となり具体的な行動を引き起こす。
メンタルモデルが引き起こす行動の例
メンタルモデルが引き起こすと考えられるユーザーの行動との関係性について示す。 例として、タッチパネルにメニューと金額の一覧が表示された券売機で食券を購入する場合、ユーザーは次のような行動を取るとする。
- 財布に入っていた1000円をとりあえず投入し、タッチパネルのメニューから1000円以内で食べられそうなハンバーグを選ぶ
- 入り口で宣伝されていたハンバーグが食べたいと思ったので、タッチパネルのメニューからハンバーグを選択し、代金を投入する
このとき、「自分の置かれている状況から券売機をどう操作すればすぐに食券を買えると思うか」がメンタルモデルであり、ユーザーはそれに即して「1000円を入れる」、「ハンバーグを選択する」などの行動を取っていると考えられる。
なぜメンタルモデルを意識する必要があるのか
前述の券売機の例に照らし合わせて考える。
ハンバーグを食べたい人が、最初にタッチパネルでハンバーグを選択したら、「先にお金を投入してください」というエラーメッセージが返ってきてしまったとする。 選択できそうなUIだから選択したにもかかわらず、「あなたの操作は間違っている」と言われてしまうわけで、これに苛立ちを感じる人は多いだろう。
これがメンタルモデルに即していない典型的な例である。 ハンバーグを食べたい人にとって、先にお金を入れなければならないことは知りようがない。
このケースの場合、操作をする前に必ず目に着く形で「先にお金を投入してください」と伝えるか、メニューを選択した後に確認画面で「代金の1000円を投入してください」と伝える必要がある。
一般的に、表現モデルがユーザーのメンタルモデルに近いほど、ユーザーはプロダクトを理解しやすく使いやすいと感じ、逆に実装モデルに忠実に表現するほどプロダクトに対する学習コストが上がり、使いづらく感じるとされる。
設計時においては、実装モデルをいかにうまく隠し、表現モデルをユーザーのメンタルモデルに近づけることができるかに、プロダクトデザイナーの手腕が問われる。